第124章 白日
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――――随分と生意気になったもんだ。
これまでにあいつの身に何が起こった?
強姦未遂に暴行、拉致監禁、誘拐……そんなフルコースで恐怖を味わっておきながら、「死にません。」と言い切れるあの自信はどこから来るんだ。
どうやっても止めることはできないんだな。
お前のことを。
――――――皮肉なものだ。
その翼を育てなければ、俺の側で守られるだけの非力な女でいさせられたのに。
俺に背を向けたナナの背中に配された自由の翼を見て、視線を落とした。
「――――彼女をどこかで……見たことがあるぞ……。」
「あ?」
ニックが口を開いた。
「――――そうか、オーウェンズの娘だ……。」
「………だから何だ。」
「最も壁に守られていられる場所で生まれ育った彼女が、なぜこんな……最前線に……?」
「――――……馬鹿じゃねぇからだろ。」
「…………。」
俺の言葉に、ニックが口を噤んだ。
「壁の中で飼われることに疑問を持てる奴はいる。この残酷で理不尽な世界に疑問を持って――――可能性を見出して抗おうとする奴らの集まりだ。調査兵団ってのは。」
「…………。」
「自分のことしか眼中にないような中央の連中には俺達の考えなど、想像もできねぇだろうよ。」
「…………。」