第11章 交錯
私が団長室に入ると、エルヴィン団長は私をソファにかけるように促した。緊張しつつもソファに座ると、エルヴィン団長が正面に座り、蒼い瞳が私を映した。
「調子は、どうかな?」
「はい、お蔭さまで……もう大丈夫です。その節は……本当にご迷惑をおかけしました。」
私は深々と頭を下げる。
「いや、むしろ君を守ってやれなかったのは私たちだ。こちらこそ力不足で君を傷付け、申し訳なかった。」
「そんなことはありません!あの時皆さんが駆けつけて下さっていなければ……。お礼の言葉もございません……。それに、もともとは私の不用心さが招いた事です。」
「………それにしても、君の回復力には驚かされる。……主に、心のね。以前に増して訓練にも積極的で、もう立体機動も他の兵士と見劣りしない程だと聞いている。」
「はい。今回の一件は、恐怖こそ感じたものの……得たもののほうが多いと思っています。自分がいかに非力か、世間知らずか………入団前にリヴァイ兵士長が仰ったことの意味も、ようやく分かったのです。思い知ったからこそ、より前を向いて自分を律しなければ、と思うと訓練にも自ずと力が入ります。」
目を伏せる私に、エルヴィン団長から思いがけない言葉がかけられた。
「君は、強いな。」
顔を上げると、エルヴィン団長は優しい目で私を見つめていた。
改めてエルヴィン団長の瞳を正面から見つめると、まるで自由の空のように鮮やかで深いその目は、まさに彼の人としての器の大きさを感じさせるものだった。まるで吸い込まれそうになる。