第123章 優等生
「……………おかしくないですか……?」
「ん?何が?」
「翼の日に聞いた――――……ナナは、兵長の恋人だったって………。」
俺の問に、ハンジさんはくふふ、とたまらなく面白い、と言った顔で言った。
「そうだよ。リヴァイの恋人だったナナを、エルヴィンが奪い取ったんだ。大人って怖いよねぇ。」
「えっっっっっ?!?!人類最強から?奪い取った?!」
「―――というかナナさんすごい……。」
アルミンが小さく驚きの声を漏らした。
「―――ん、まぁ本人たちにしかわからない色々あるみたいだよ。とにかく今ナナはエルヴィンの側で幸せそうに笑ってる。ナナがいるからエルヴィンはこんな過酷な道も迷わず調査兵団を率いて行けるんだ。――――そしてリヴァイはそんな2人を信じて守ろうとしてる。良い関係性だよ。」
「―――……そう、なんですね……。」
俺の事を見て、ハンジさんがケラケラと笑う。
「少年の淡い恋心なんて、簡単に無慈悲に粉砕するような2人だから!!まぁ諦めなよエレン!!そんなことよりエレンは自分の心配をしてくれよ?壁を塞げるように……人類の存亡が君にかかってんだからさ!」
「はい………。」
ハンジさんの言葉は納得だ……俺がいくら想いを寄せても、エルヴィン団長とリヴァイ兵長が奪い合ったナナを……どうこう出来る気が全くしない。
………いや、そんなことより、だ。
俺にはやるべきことがあるじゃないか。
そう思って切ない恋心を胸の内にしまって前を向いた。
その時。
「……!あれ、ウトガルド城跡……?!」
ミカサが一番にその塔らしきものを発見して指を差した。ミカサの視力は異常にいいんだ。
「――――巨人が、群がってる!!!!」
「なんだって?!急ぐぞ!!!」
ハンジさんの号令でスピードを上げる。
そうだ、巨人が群がるってことは――――人間がいる。
同期のみんな………どうか、無事でいてくれ……!