第123章 優等生
私はふーーーーっと長く息を吐いて心を落ち着かせて――――、また巨人討伐に向かった。
立体機動を生かせる場所であったことが幸いして、数えきれないくらいの巨人を4人で討伐した。
一段落かと思ったその時――――ひゅるるる、と何かが飛来するような音が聞こえた。
「――――なんだ……?」
次の瞬間、馬が繋ぎ止められていた厩舎にけたたましい轟音ととも爆ぜた、ように見えた。
「えっ………?」
なんだ、何が起こった?
爆発……?
いや、違う。
何かが飛んできた……?
状況を理解しようと頭を働かせるけど、そんな中また飛来音が聞こえた。
嫌な、予感がする。
全身の毛穴が開いて汗が噴き出す。
心臓が最大の鼓動を鳴らす。まるで全身の運動能力を最大限まで高めようとしているみたいだ。
それはなぜか。
―――――命の危機を感じ取っているからだ。
ふと、風が動いた。振り向くとそこには闇を裂くようにして迫る大きな岩。
「――――――!!!!」
今までに私が見届けた仲間の死に顔が頭の中を駆け巡る。
これが、走馬燈ってやつなのか?せめて死に顔じゃなくて楽しい思い出にして欲しかったけど。
私が受け取った命の重みは、誰かに引き継いでいけるだろうか。
そしてそこに私の命の重みも少し加わって―――――誰かが少しだけ強くなれるなら。
私の生きた意味は、死ぬ意味は、あったのかな。
ただただ退屈に生きただけじゃ残せなかったものを残したと、そう思う。
自分はつくづく最期まで、なんて物分かりのいい”優等生”なのだろう。――――調査兵団になんて入らなきゃ良かった、とんでもない犬死だったと悪態でもつきゃいいのに。
飛来した岩が塔に当たって砕け散った衝撃と爆風と爆音を最後に、私の命はこときれた。