第123章 優等生
ナナバさんとゲルガーの見事な連携で10mはなんなく倒した。
塔の上に伸びてくる手がなくなった隙に、塔への入り口を破壊しようとしている巨人を削がないと。小型が塔へ侵入すれば新兵たちが危ない。
そう思って駆けつけてみればもう木戸は破られていて、塔への巨人の侵入を許してしまっていた。急ぎ塔を駆けあがり、屋上に射る新兵に危機を知らせる。
「巨人が塔に入って来てる!!急いで中に入ってバリケードを作って防いで!!屋内では立体機動装置が使い物にならない……防げなかった時は……最悪この屋上まで逃げて来て……。それでも必ず守ってやれるってことじゃないからね?私たちも生きているかわからないから……。」
自分でも驚くほど、弱気なことを言っている。
いつもの私なら――――自信ありげに、後輩のことは守ってやると、言い切れるのに。
「まだ何体いるか……ガスや刃がもつかどうか……先が見えない。でもやることはいつもと同じさ。生きてるうちに最善を尽くせ!!!いいね?!」
新兵に発破をかける。これまでの壁外調査でもそうだった。
そして――――そうやって励ました後輩たちが無残に死ぬところを何度も見た。ナナさんが言っていたとおり、私はその死を見届けた仲間の重さだけ、強くなれているのだろうか。
強く……なれているはずだ。
いや、そうでなければならない。
「――――……苦しい、ものだね。」
ぽつりと言葉が漏れる。
強くない自分を、泣いて逃げ出したいと思う自分を押さえつけて、強くならなくてはいけない、進み続けなくてはならないと言い聞かせる。
ああこうやって心が潰されそうになりながら彼女は――――ナナさんは、あの兵士の顔になっていったんだろうな。
「………もっと話してみたいな。――――帰ったら――――もう一度、話せるかな……。」