第123章 優等生
どういうことだ。
巨人は壁を破壊して流入したのではない。
今までとはまるで違う何かが、起こっている。
それでもまだ希望を捨てられない。
穴を見つけたところで今の私たちに塞ぐ術などなく、たとえ以前のようにエレンが巨人化したとしても大岩などもないこの場所でうまく塞ぐことなど困難だと思われる状況なのに―――――穴が見つかって欲しいと思うなんて、想像もしていなかった。
「見落とした可能性は?」
「ありえない……。巨人が通れるほどの破壊跡だぞ……?」
「どうする……もう一度確認してみるか……?」
「そうすべきだが……さすがに馬も我々も疲労が限界に来てる。今以上の集中力は期待できない。」
――――いや、穴はないんだ。きっと。
別の方法で巨人が出現した可能性を考えるべきだ。そしてさっきの………コニーの村の不自然な状況。想像したくもない仮説が一瞬頭をよぎる。
そんな恐怖に満ちた想像を払うかのように、ようやく闇夜に月明かりが射した。数百m先に、月に照らされた城跡のような建物が見える。
私たちは一旦そこで休息をとることにした。夜の間にやっと一息つけるか、そう思った考えは簡単に打ち砕かれて――――、私たちは闇の中の死闘を強いられることになるなんて、思っていなかった。
城跡の中でたき火を囲んで束の間の休息をとる。
流れて来た雲が月をまた隠して――――辺りは闇に包まれた。その間も夜間とはいえ警戒を怠ることはできない。
交代で私が塔の屋上で見張りをしていたその時―――――戦慄した。ふと雲が切れて射した月明りの中、数体の巨人がこちらに近付いて来ている。
「――――なぜ…っ?!」
震える足をなんとか動かして階段を駆け下りた。