第123章 優等生
日が落ちるまで一度も巨人には遭遇しなかった。
段々と闇がこの世界を支配し出して――――すっかり松明なしでは歩みを進められないくらいの暗闇の中、私たちの精神は限界に近かった。
壁伝いに南から西に向かって破壊箇所を探す。
松明を頼りに暗がりの中で。
いくら巨人が日光をエネルギー源にしていて夜は活動しないとは言え、この僅か3mほどの視界の外から、いつ巨人が飛び出して来るのか、ひいては――――いつ死に直面するのか、分からない状態だ。
喉がカラカラに干からびる。
呼吸が早く、汗が滲む。
身体中の水分が、沸き上がる緊張と恐怖とに熱されてか、急速に失われていく。
皆終始無言のただならぬ緊張感の中、しばらくして遠くにいくつかの光が見えた。
「――――あれ、は……?」
高さと速度からして、人間だ。
徐々に見えて来たその光の主は、西班として別れたはずのナナバさん達だった。
安堵したと同時に、まるで虫が背中から這い上がるような、嫌な感覚が襲う。
「ナナバ……お前らも壁に沿って来たのか……?」
ゲルガーの問に、ナナバさんが想像通りの反応を返した。
「ああ……それで……穴はどこに?」
「は……?」
「??こっちはかなり西から壁沿いを迂回して来たんだけど異常は何も無かった。こっちじゃないとすればそっちが見つけたはずでは?」
「いいや……こちらも穴など見ていない……。」