第123章 優等生
そんな事を少し思い出すのはなぜだろう。
死期が近いって虫の知らせってやつか?
だとしたら笑えない。
馬で随分駆けて、南の集落が見えたところで新兵のコニーが速度を上げて1人駆け出した。彼の故郷なんだろう。
決して大きな集落とは言えない。ちらほら立つ民家の間を、巨人を警戒しながら進む。
なんだろう、この違和感は―――――。そう思いながら更に馬を進めると、ある家に背中から倒れ込んだかのような、不思議な恰好の巨人を発見した。
「!!!!コニー下がれ!!!」
コニーの同期のライナーが、呆然とするコニーを掴んで巨人から距離をとらせる。
でも危険はない。
だってこの巨人の手足は細くて短い。まるで成りそこないのように……。到底二足歩行なんてできやしない、四足歩行も。ましてや――――立ち上がることもできないだろう。
「お前ら、下がってろ!!」
装備もなにもない新兵を戦闘に当たらせるわけにはいかないと、ゲルガーが刃を抜いた。
「俺の家だ……俺の……。」
コニーの言葉から、コニーの家族はもうきっと生きていないだろうと察する。――――なんて、惨い。
「ねぇちょっと……ゲルガー……!」
「ああ、リーネ……こいつ……動けないのか……?」
「…………。」
「じゃあ……こいつ……どうやってここまで来たんだ?!」
その身動きの取れない巨人の他に巨人も、人間も全く見当たらない。嫌な予感を胸に秘めたまま、馬を休ませるために一旦馬を降りて、くまなく見て回る。
そしてこれから夜が更けても壁の穴を探すために馬を走らせなければならない。壊れた家の木材などを使って、新兵には松明を作らせる。
「おい……何か妙だぞ。」
ゲルガーも気付いている。
「誰か……死体を見たか?」
「――――………。」
「いいえ……。」
「見てません……。」
「そんなことがあるのか……?巨人が一滴の血も残さずに集落を壊滅させるなんてことが……。」
駄目だ、今そんな仮説を立ててしまえば―――――誰もが恐怖で身動きもとれなくなる。