第123章 優等生
『訓練を受けずに調査兵団って無謀だと思うんですけど、具体的にどんな仕事をされているんですか?壁外調査にも出るんですか?』
壁外調査になんて出るわけないだろう。
所詮団長の女か――――、囲われてる身なんじゃないかと下衆な想像をした。
ただその時彼女の口から語られたことは、想像とは正反対の無慈悲な現実。
自分の無力さに打ちひしがれながら、仲間の死を無駄にしないために生きるという、生き残れっていけば生き残っていくだけ、重く辛いものを背負う過酷な道だった。
『―――――悲しくて、情けなくて、不甲斐なくて、怖くて―――――。でも、敬愛する上官から教わりました。私が友人の死から学び、強くなることが、弔いになると。そうやって死にゆく者の重みが増えるごとに少しずつ、調査兵団はより強くなっていくんだと、思います。そしてそれこそが、人類にとってこの囚われた世界を覆すための武器になる。―――――だって、巨人の謎を知り、根本を解決しない限り、明日――――――またこの壁が破られるのかも、しれないんです。」
あの時のナナさんの表情は今でも忘れない。――――仲間の屍を超えてその先を掴み取る覚悟をしている、兵士の顔だ。
――――私は、気が付けば調査兵団にいた。
馬鹿らしい、絶対に調査兵団なんかに入るもんか、と思っていたのに。
きっと私は―――――あんな風に真剣に―――――生きてみたかったのかもしれない。