第123章 優等生
――――ミケ分隊長が囮になって巨人を引き付けてくれたから――――、私たちは予定どおり4方向に離散することができた。私はゲルガーと共に新兵を率いて南へ向かった。
早急に破壊された穴を探さなければ――――、人類は終わりを迎える。
私はずっと何もかもそつなくこなせる要領のいい”優等生”だった。勉強も、体を使うことも人並み以上にできた。ただずっと退屈で――――、何か自分の見たこともない世界を期待して訓練兵団に入ったんだ。
「リーネ、お前は本当に飲み込みが早いな。先輩兵士もたじろいでいたぞ。」
「……恐れ入ります、教官。」
成績も常に上位。
憲兵団に入る権利はほぼ確実にあったし、見たこともない世界を見たいと言っても、まさか命知らず集団の中に入るなんてことは考えてなかった。
どうせ私はそつなく憲兵団に入って、退屈な毎日の中―――――、「王を守ってる」なんて心にも思っていないことを自分に言い聞かせながらそつなく生きていくんだろう。そう思っていた。
あの日訓練兵団にやってきたあの人の言葉を聞くまでは。
『――――私は、ナナ・オーウェンズと言います。調査兵団に入団して2年目です。――――元々の職業は、医者でした。』
異例の転身を遂げたその調査兵団のその人はあまりに華奢で小さく、傷一つ負った事が無さそうな美しさだった。こんなに自由の翼が似合わない兵士もいるんだと、内心鼻で笑ったほどだ。
苦労知らずって顔だと思った。
私もそう。
同族嫌悪ってやつか、ほんの少しの嫌味を言ってみたくなった。