第122章 密約
―――――――――――――――――――――
トロスト区。
その壁上で、その戦況を見極めながら采配を下すピクシス司令を見つけた。いち早く現状を把握するためにピクシス司令の元に向かう。
「――――ピクシス司令!」
「おおエルヴィン。ナナも。―――例のねずみっ子を一匹捕らえたらしいの。」
「えぇ……しかしあと一歩及びませんでした。」
「しかしあれで中央の連中は考えるであろうぞ。古臭い慣習と心中する覚悟が自分にあるのかをの。」
「えぇ……そのようです見てください。」
壁の下――――トロスト区内には、一角獣を背負った兵士がうろついている。
「ついに憲兵団をこの巨人のいる領域まで引きずり下ろす事が叶いました。」
――――荒療治の一端は成功したと言えるだろう。ここから先は壁の破壊状況によっても動き出しが変わる――――ピクシス司令の采配は見事としか言いようがなく、ただ今は壁の状態を確認しに言っている先遣隊の戻りを待つのみだ。
「――――ナナ。」
「はい。」
「先遣隊の戻りが来るまでの間、リヴァイの足の容体を診てやってくれ。怪我をしたまま長時間移動させているし―――――、一日も早く治してもらわないと、いつまでも一個旅団の戦力を失ったままでは厳しいからな。」
「はい、分かりました。」
リヴァイの足はこの上ない痛手だ。
先遣隊による情報がいかなるものでも、この場は例え丸く収まったとしても、この回り出した歯車は近いうち、大きな転機を迎えるに違いない。
その時にリヴァイが万全な状態であれるよう――――、ナナに治療に付かせる。指示を出すと、ナナはすぐに立体機動で壁下まで降りて行った。