第122章 密約
それからしばらくして、辺りがざわついた。
――――先遣隊が帰着したのだ。私もピクシス司令も壁上から降りて、伝達兵の話を聞く。
「か……壁に穴などの異常は見当たりませんでした……!」
予想通りの答えに、ピクシス司令もまたそうだろう、と頷いた。
「そうか……やはりのう。」
「しかし!大変な事態になりました!!!我々はトロスト区に報告に向かう帰路で、ハンジ率いる調査兵団と遭遇しました!!その中に装備をつけていない104期の新兵が数名いたのですが……。」
104期―――――――やはり黒か。
「その中の!3名の正体は……巨人でした!!」
「――――は……?何言ってんだあんた?!あいつらの中に……まだ?!さ、3人って………?!誰が?!?!」
ジャンが取り乱して問い詰める。
「ジャン待つんだ。正体が判明してどうなった?」
――――遅かったか。
結局のところエレンはその3人の巨人化できる104期に連れさられたとのことだった。
3人が3人ともエレンとを必要以上に奪取しようとするのは、他の巨人と違う、何かエレンにしかない能力でもあるのだろうか―――――……?
「場所は?」
「トロスト区とクロルバ区のちょうど中間地点でしょうか……。」
「――――ピクシス司令。」
「ああ。頼めるかエルヴィン。」
「もちろんです。――――……リフトで馬車と馬を壁上に移動後、壁上を駆けて援護に向かう!!最速で各自準備せよ!」
なんとしてもエレンを取り返す。
なぜなら―――――ウォール・マリアを取り戻すためにエレンの力は不可欠だからだ。
ちら、と目をやると、ナナもまた強い意志で馬の手綱を握った。怖くないはずがない。
ただ彼女も、愛する弟のようなエレンを救うために必死だ。
ナナの疲れは気になるところだが、彼女に『行けるか?』とは聞かない約束だ。
「――――ナナ。エレンを取り戻すために、行くぞ。」
「――――はい……!」
そんな私たちのやりとりを横目で見たリヴァイが、何かを抑え込むように目を逸らした。