第122章 密約
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王都の兵団本部にて、エルヴィン団長はザックレー総統に現状を伝達。ザックレー総統は憲兵団の派兵を指示した。
王都からエルミハ区へ。
エルミハ区でも現状の情報は伝達されていた。
ピクシス司令の迅速な対応により、ウォール・ローゼ南西部に防衛戦線を張り巨人の掃討と足止めを試みつつ、同時に先遣隊を派兵。ウォール・ローゼの損壊箇所の特定を急いでいるとの情報があった。
エルミハ区からトロスト区に向かうウォール・ローゼ内の巨人の数は、なぜか非常に少ないとの情報があった。とはいえ巨人がいる平野を、たった2人で駆けるのは自殺行為だ。
先遣していたリヴァイ兵士長とニック司祭とジャンを含む調査兵団の一部と合流し、更にザックレー総統から預かった憲兵団の一部とで小隊を結成してトロスト区を目指した。
「――――……巨人との遭遇が、まるでない………。」
平野を駆ける中で、少ないとは聞いていたものの――――まるで巨人の姿が見当たらないことに疑念を抱いた言葉を漏らした。
私たちの後ろで、憲兵団の兵士達が安堵の息を吐いた。
「ああ……。変だな。」
エレンが穴を塞いだ?いや時間的に考えてありえない。
塞げていたとしても、それまでに侵入した巨人をこんな短時間で掃討できるはずがない。
「―――ミケ分隊長の班か――――もしくは駐屯兵団の防衛戦線がそんなにも討伐をしたのでしょうか……?」
「いや、考えにくい……ナナ、これまでの出来事に捕われずに考える必要が、あるかもしれない。」
「これまでの出来事に捕われずに………?」
エルヴィン団長の言葉を何度も頭の中でかみ砕いて考えた。
私たちの頭にある“定説”。
それを覆す想像を試みる。
エレンや女型の巨人の存在が明るみになって、最も覆るのはここだ。巨人は壁を破壊しない限り入って来ない。それを疑わなければならない。
――――だって彼らはいつ、どこでだって巨人になれる。
人が行き来することができれば、巨人の発生はあり得るのだと――――今までの常識さえも疑う。