第121章 一変②
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「――――エルヴィン団長。ピクシス司令とサッシュさんへの早馬は無事送り出しました。」
「ああ、助かる。」
「この後はすぐ移動されるかと思い、必要な物品も馬に載せています。いつでも出立できますが――――王都の兵団本部に向かいますか?」
―――私の思考でも読んでいるのかと思うほど、先回りして気を利かせることができる私の補佐官は有能すぎる。
「ああ。夜通し走ることになるな。」
「兵士の帯同はされますか。」
「――――不要だ。最速でザックレー総統との話をつけて、明日の日暮れから夜間にウォール・ローゼ内を走り抜けてトロスト区のピクシス司令と合流する。最小限の人数で動く。直接トロスト区に向かわせる班も組んだ。各班長に指示を頼む。」
「―――――承知しました。」
ナナに走り書いた指示書をばさ、と渡す。
ナナは即座に目を通してその内容を理解した。皆まで言わずとも伝わるのは――――徐々にその思考が私に似てきている証拠だ。
「それが終わったら私たちも出立する。―――相当な移動距離と、過酷な道のりだが―――ナナ、一緒に来られるか?」
鍛えぬいた兵士であっても過酷な移動だ。そしてトロスト区に無事ついたとて、休めるわけではなく―――――そこからおそらくまた戦いが始まる。
ナナがそれに耐えられるのかどうかは心配だった。意志を問うと、ナナはまるでいっぱしの兵士の顔で、迷うことなく真っすぐに私を見つめて、凛とした声で言った。