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【進撃の巨人】片翼のきみと

第121章 一変②




「できそうかどうかじゃねぇだろ……。」



「………!」



「やれ。やるしかねぇだろ。こんな状況だ。兵団もそれに死力を尽くす以外にやることはねぇはずだ。必ず成功させろ。」



「…………。」



「――――守ると言ったよな。他の誰にもできねぇことだ。やれ。お前が。」





俺の言葉に、エレンの脳裏にはあいつが笑う顔が浮かんだだろう。

エレンは目を見開いて、喉をごくん、と鳴らしてから――――腹を括ったように頷いた。





「はい!!!俺が必ず穴を塞ぎます!!」



「…………。」



「必ず………。」





月明かりの中、エルミハ区の門が見えて来た。





「俺と司祭はここまでか。後は任せた。お前らはエルヴィンの決めた即席の班だ。わかってるなアルミン。お前はその調子でハンジと知恵を絞れ。」



「は……はい!」



「ミカサ……お前の能力のすべてはエレンを守ることに使え。」



「……はい!もちろんです。」






ミカサの表情から、二度と女型にエレンをくれてやったときのような失態は犯すまいという強い決意が見える。だが、その想いの強さに冷静さを欠いたのが前回の痛手だった。





「……お前がなぜエレンに執着してるか知らんが……自分を制御しろ。もうしくじるなよ。」



「………はい。もちろんです。」





――――自分を制御しろ、その言葉をエルヴィンからかけられたのはいつだったか。

あぁそうだ。

ナナを犯そうとしたビクターを半殺しにした時か。



自分の命よりも大事な存在と言えるものが蹂躙されそうになって自我を失う、その感覚はわかる。

だが結局、自分すらコントロールできない奴が窮地に立たされた時、大事なものを守れる判断を、行動を――――最適にできるわけがない。




いつかエルヴィンが俺に垂れた能書きを今度は俺が部下に同じ事を言っている。




―――――一大事だって時に、なぜこんな下らねえことを思い出すのか。

おそらく、さっきまで月を覆っていた雲が流れ、闇が支配していた夜に煌々とした月明かりが射したからだ。





俺は小さく舌打ちをして夜空を見上げた。




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