第121章 一変②
「――――言ったじゃないですか。私は全てあなたのものだと。『来られるか?』ではなくただ一言、『来い。』と――――言って下さい。」
――――この頼もしい最愛の存在が―――――俺を強く、そして――――弱くもする。
「――――そうだったな。」
「ついていきます、地獄でも。」
ナナのその目が俺だけを映して、俺を信じきって、俺のためにそこに在る。
―――――不思議だ。
いつ死ぬかわからないこんな逼迫した状況に置かれているこの今こそが―――――、滅茶苦茶に、無理矢理君を抱いている時よりも――――甘く愛していると君が囁くその時よりも、心の奥底で繋がって、通じ合って――――共に生きていると、実感できる。
血に塗れた地獄さながらの道のほうが、俺達にはお似合いなのかと自嘲に近い笑みがこぼれる。
「ああ―――――。では来い、ナナ。」
「――――はい!」
こんな時なのに、君は嬉しそうに少し笑った。
おそらくそれは、俺と同じ――――“繋がっている”ことを感じているからだろう。
不思議と絶望も、恐怖も感じない。
どんなに残酷な光景を目の当たりにしても、周りから悪魔と罵られるような惨い采配を下すとしても―――――共に背負い、赦してくれる君がいるから―――――俺は進み続けられるんだ。
人類存亡をかけた一縷の光を求めるように、俺達は闇夜の中を共に駆けた。