第121章 一変②
道中、ハンジがずっと手元の石ころを見つめては何かを考えていた。
聞けばそれは女型の巨人・アニが硬質化した際の皮膚の破片だと言う。
それは壁の破片とよく似た構造をしていて、俺達を囲っていた壁は―――――大型巨人が支柱になって表層を硬化した皮膚で創り上げた、“人垣”のようなものだと推測できる。
もしそれが叶うのなら―――――
「巨人化したエレンが硬化する巨人の能力で壁の穴を塞げるのだとしたら―――――?」
「―――賭ける価値は大いにあると思います。」
アルミンが希望を宿した表情でハンジの推察に同意し、その先を考え始めた。
「夜間に壁外の作戦を決行するのはどうでしょうか?」
「夜……に……?」
「はい!巨人が動けない夜にです!松明の明かりだけで馬を駆けさせることはできませんが……その速度でも、人数を絞れば夜明けまでにウォール・マリアへ行けるかもしれません。」
「――――状況は絶望のどん底なのに……それでも希望はあるもんなんだね……。」
ハンジがぎゅ、とその手の石ころを握った。
それにしても――――アルミン、こいつも頭がキレる。
突拍子もない裏をかいた案を出して来るところはエルヴィンに引けをとらない。もちろんエルヴィンの絶対的経験値とその覚悟や度胸、遠く及ばない要素は大いにあるが―――――悪くねぇ素質を持ってる。
「ただし全ては――――エレンが穴を塞げるかどうかにかかっているんですが……。」
「エレン、こんなこと聞かれても困ると思うんだけど……それってできそう?」
毎度毎度未知の力をあてにされて、同情すらするが―――――そういう運命なんだろう。
即答できずにたじろぐエレンを、更に追い詰める言葉を選ぶ。