第121章 一変②
「壁が突破されたその付近まで、行くのか……?」
「ああそうだよ。急ぎ壁を塞がなければ、人類は滅亡だからね。」
ハンジからの冷ややかな目線に目を合わせることもないまま、ニックは俯いてぼそ、とその言葉を口にした。
「我々が隠していた事がいかに重大であるかは理解している。だが……!我々にも信じるべき守るべきものがある……。」
「それはさっきも聞いたって!なんだよもう、いい加減にしろ!忙しいんだこっちは!!!」
ハンジがニックの胸ぐらを掴んで詰め寄る。
「―――……私も、連れて行って……くれないか……。」
「………は?」
「―――その、我々が守るべき掟と――――、今この時の人類の存亡と―――……本当に守るべきはどちらなのか……自分の目で見て、自分に、問いたいのだ………。」
ニックの言葉に、ハンジは察した。
この男にも俺達にはわからねぇ重責と、守るべきものがあるのだろうと。そして自分の私利私欲のためだけに、その重大な秘密を黙秘してきたわけではないのだろうということも。
「――――……いいだろう。連れていく。だが、妙な真似をしたら――――命の保証はない。」
「………ああ、分かった……。」
エレンとミカサ、アルミンが揃い、雲が時折月を隠す僅かな月光と松明を頼りに――――ニックを含めて俺達は急ぎエルミハ区へと発った。