第121章 一変②
「―――区長、今にここストヘス区にも避難民が押し寄せます。受け入れの準備を。」
「……っ………わかった。」
「――――ハンジ。」
「はいよ!」
エルヴィン団長は会議の席から立ち上がり、マントを羽織りながらハンジさんと私に指示を出す。
「本当にウォール・ローゼが突破されたとしたら、穴を早急に塞がねば人類は終わる。穴を塞げる望みはエレンにしかない。エレンとリヴァイ・アルミン・ミカサを連れて先んじて発て。護送に連れ立つ面々はハンジの判断に任せる。ミケ達が情報を得て帰還するとしたらエルミハ区だ。」
「了解、エルヴィン。アルミン、行くよ!!」
「は、はいっ!!」
ハンジさんはエルヴィン団長の命を受けて、皆まで言わずとも全てを理解したようだ。私に“先に行くね”と目くばせをして、アルミンと共にマントを羽織って部屋を駆け出した。
「――――ナナ。」
「はい。」
「ピクシス司令に早馬を。書状は私が書く。それと――――。」
「サッシュさんに率いてもらって、動ける兵員は壁伝いにカラネス区からトロスト区まで動かしますか。穴を塞ぐ時にエレンを護衛する必要がある――――少しでも想定損壊場所に近い場所まで戻す必要があるかと。」
「その通りだ。頼む。」
「承知しました。こちらの書状は私が?それとも私が早馬として伝達を――――」
「書状を早馬に託せ。――――君は、私と来い。」
「はい。どこへでも。」
私の返事に、エルヴィン団長が微かに笑んだ。
誰一人、口を動かすだけで硬直して動こうとしない中、エルヴィン団長の采配で私たちは即座に動き出した。
その様子を見た区長が、ハッとしたような顔で周りに避難民受け入れについての指示を飛ばし始める。
その慌ただしさを後目に、私たちは自由の翼を翻してその場を去った。