第121章 一変②
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「おい、どういうことだ?!ウォール・ローゼが突破……?」
「すぐに住民の避難を……!」
「馬鹿か、ローゼの住民をシーナ内に受け入れるなど、混乱を来たすだろう!それにすべて受け入れられるわけがない!!」
「とにかく情報を!」
「今にこのストヘス区も破られるんじゃないか……?!」
「こういった時に前線に立つのが調査兵団じゃないのか!すぐに派兵しろ!!!」
会議の場は途端に混沌へと叩き落された。
口々に熟考もしないままの言葉を吐く。そこには己の保身しか考えていないものも多く含まれていて―――――、本性が見え隠れするその様子に、私は内心激しい嫌悪感を抱いた。
「―――緊急事態だ。区長、この件についてはまた後日にさせて頂きます。」
エルヴィン団長はガタ、と席を立った。
「待て、まだ話は片付いていない――――、この機に乗じて逃げる気ではないのか?」
「………ウォール・ローゼが本当に突破されたのなら――――あと数時間でこのストヘス区を巨人が囲むことになります。」
「……………!」
「門ではない壁をも破壊する力を敵が有したと仮定するのならば――――、このストヘス区の門など、破壊するのは容易いでしょうね。」
「―――……だめだ、それだけは――――あっては、ならない……。」
「ちょうどウォール・ローゼ付近には調査兵団分隊長が指揮を執る班を配置している。最適な働きで壁に空けられた穴の在処を確認しているに違いない。情報を集めるのは我々調査兵団の得意とするところです。」
「…………。」
区長は苦渋の表情をしながらも、エルヴィン団長から真っすぐ射られるようなその目に負けるようにして目を逸らせて伏せた。