第121章 一変②
『―――え?俺……今、待てって言ったろ?』
力を込め、赤子の手を捻るように簡単に小型の巨人の頭を握りつぶした。
『―――その武器は、何て言うんですか?腰につけた――――飛び回るやつ。』
心臓が破裂しそうに唸って打つ。
人語を話す。それも――――当たり前のように。
エレンは自我を保つのもやっとだった。
女型は、その身体を使いこなしていたものの、奇声以外の人語を発することはなかった。
―――――こいつは……圧倒的にその能力を熟知して、使いこなしている――――巨人化できる、人間だ。
あまりの出来事に言葉を失う。
足も砕かれ、立ち上がる事も出来ない中で未知の恐怖と対峙して――――俺は身体中がガタガタと―――――震えていた。
『う~~~~ん。同じ言語のはずなんだが……怯えてそれどころじゃないのか。つーか……剣とか使ってんのか。やっぱうなじにいるってことは知ってんだね。………まぁいいや。持って帰れば。』
そう言って獣の巨人は俺に向かって手を伸ばした。立ち上がることも出来ず、ただその身に起こる事を拒否するように蹲ると――――その指で器用に、俺の腰に装備された立体機動装置をもぎ取った。
足も動かない。
立体機動装置も奪われて――――この獣の巨人を凌ぐことなど、到底不可能だ。
――――だが、ナナバとの会話が脳裏に蘇る。
“人は戦うことをやめた時、初めて敗北する。戦い続ける限りは、まだ負けてない。”
そうだ。その通りだ。
例え一寸先が死でも。
抗い、戦うことを止めないのが―――――俺達だろう。
気力を振り絞って、刃を構える。
『――――あ、もう動いていいよ。』
獣の巨人がちらりと目くばせをした先には――――俺が倒し損ねた3体の巨人。
まるで主人の言いつけに従うように、許しを得たとばかりに俺に群がる。
――――待て、待て……待ってくれ……、こんな奴がいるなんて。
人語を話し、巨人を操る。
伝えなければ、エルヴィンに―――――。
こんな恐怖を仲間に味わわせたくない。
だから、帰――――――……
「――――や……やめろっ……ぁあああぁぁああ―――――っ………。」