第121章 一変②
――――5体、仕留めた。あと……4体。
だがもうガスもブレードも残り少ない。ここで全て使い切るわけにはいかない。
随分と皆がここから離れる時間は稼げた。俺も馬でどこかの班への合流を目指すか――――、そう思った目の先には、体中を体毛で覆われた、見たこともないような巨人がずしん、ずしんと足音を立てて平野を闊歩していた。
「――――でかい……17m以上ある……?」
先ほどからうろうろとただ歩き回っている。
奇行種、なのだろうか……とにかく今関わるべきではないと、本能がそう告げる。
――――危険な匂いがする。
ちょうど良いタイミングで馬が戻って来た様子が見えた。このまま騎乗して逃げるか――――そう思ったその時、その気味悪い巨人は馬を掴んだ。
「なっ………?!馬を狙った………?!そんな………まさか?!」
その猿のような獣の風体をした巨人と、目が―――――合った。
その瞬間、手に掴んでいた馬を――――こちらに投げて寄こした。
「ッ?!!」
辛うじて飛んできた馬体を避けたものの――――体勢を崩して建物の上から落下したその先には、早く俺を食いたいと―――――先ほどからうろうろと俺を狙っていた小型の巨人だ。
勢いよく身体を鷲掴みにされて即座に口に下半身を押し込められ―――――自分の骨が砕ける音を聞いた。
「ぎぃああぁああっ!!!」
『待った』
――――確かに聞いた。自分の身体の肉が裂け、骨が砕ける音と自ら発した叫び声の後に―――――こいつは、喋った。
一瞬小型の巨人が俺を咀嚼する動きを止めたが、再び口に力を込めた。
獣の巨人はぴく、と反応し、まるで命令に従わないことが不愉快であるかのように、小型の巨人の頭を掴んで、また言葉を発した。