第121章 一変②
「いいや……まだだ。人は戦うことをやめた時初めて敗北する。戦い続ける限りは、まだ負けてない。」
眼下には104期生がバタバタと騎乗準備をする様子が見える。そうだ。彼らだって諦めていない。絶望の足音が近付く中、出来る事をやろうとしている。―――――俺達が諦めて、膝をついていてどうする。
「104期には申し訳が立たない。我々が疑ったばかりに……無防備な状態でこの状況に放り出してしまった……。」
「あぁ……。そうだね。」
ナナバは俺の方を見て、そして天を仰いだ。その目に、また力が漲る。
「情けないところは見せられない。」
「――――さぁ、戦うぞ。」
元々の精鋭班に104期を加え、4班に分割。
東西南北に散らす。
それぞれの集落に巨人襲来を告げ、避難を促しながらウォール・シーナへの帰還を目指す。南班には更に壁の破壊箇所の特定という任務が加わるため、俺が指揮をする。
ゲルガーやリーネ、104期の中でも南の村出身であるコニーを含む一部を引き連れてへと進路をとる。
4班を離散させてすぐ、今まで歩行のスピードで歩を進めていた巨人共が予想外に走り出してスピードを上げた。
「……っ何故だ……?!」
「うそだろ……おい!巨人が一斉に走り出したぞ?!」
「速い……!追いつかれる……!!」
こんなところで全滅するわけには行かない。班の指揮は他の精鋭班なら上手くやれる。
―――9体の巨人を相手にできるのは、俺だけだ。
「―――ゲルガー!!!」
「は、はい!!」
「南班はお前に任せる!!!」
「?!ミケさん!!!!」
動揺の声が聞こえた気がした。が、なんとかやるしかないんだ。
――――頼んだ、ゲルガー。
俺は手綱を引いて馬の方向転換をし、巨人の前に躍り出てその注意を引きながら、立体機動装置を使える障害物がある場所まで走り抜けた。