第121章 一変②
104期の面々は武器も立体機動装備もない。
逃がすことと、近隣の住民の避難を兼ねさせるために早急にここから発たせる。ナナバがその指示を出し、塔の上で再び迫りくる巨人の位置と数を確認する。
「ミケ。巨人の位置は?」
「―――前方だ。鼻で分かる限りではな……。あの一体に9体いる。」
「再び壁は破壊されたと、そう……捉えるべきなのかな……。トロスト区やクロルバ区がやられたのだとしたら報告があるはず…扉部分以外の壁を壊されたのだとしたら……壁の破壊の規模は計り知れない……そもそも壁に空けられた穴が扉部分だったとしても――――都合のいいサイズの岩がその付近に転がっていない限り……エレンがいても穴を塞ぐことはできない。」
徐々にその陰を濃くしていく絶望。ナナバの言葉が詰まる。
「つまり……考えうる限りで最悪の事態が今……起きているってことだ……。事実上……ウォール・ローゼは突破されてしまった……。」
ウォール・ローゼの突破はつまり人類の活動領域のほとんどを失うという事だ。狭すぎる領土で人間は人間性を保ったまま生きてなどいけない。
食料を、住む場所を奪い合って殺し合う未来が脳裏に浮かぶ。
「私たちは……超大型巨人の正体も鎧の巨人の正体も……もしくはそれ以外の敵勢力も見つけ出すことにも失敗し……この日を迎えた。私たち――――人類は負けた……。」
あまりのショックに、ナナバは膝をついて震える。
確かに状況としてはこれ以上ないほど絶望的だ。
――――だが。ここで諦めて何になる?
今この時を持ちこたえて、何とかなるべく犠牲を出さずに帰還する。早馬でトーマがエルヴィンに状況を知らせている。次の手を、エルヴィンなら必ず打つはずだ。
こんなことで諦めるような男じゃない。
敵を追いつめ真実を解き明かすまで、突き進み――――戦い続けるはずだ。
そして、リヴァイも、ハンジも、ナナも。