第120章 一変
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「――――エルヴィン団長。ハンジ分隊長。まもなく……始まるそうです。」
「―――ああ。」
「……私先に行って、アルミンも呼んでから一緒に行くね!……頭は最後に出て来た方がカッコイイからさ。ゆっくり来なよエルヴィン。」
会議室とは別室で待機させられていた私たちに会議の連絡が来た。ハンジさんは気を利かしてくれたのだろう。先に部屋を出て行った。
「……やれやれ、ハンジが言うほどゆっくりしていると余計に心象が悪くなりかねない。私たちも行こうか、ナナ。」
「……はい。」
エルヴィン団長が私の顔を覗き込んで、ふっと笑う。
「――――そんなに怖がらなくていい。今すぐ私が捕まったり、調査兵団の解体が決まるわけでもない。今回の作戦を決行する必要性があったことを示しに行くだけだ。」
「は、い……。」
「……意外だな。君は結構肝が据わっていると思っていた。王都招集の会議でも、私たちを揶揄してくる輩には毎度噛み付きそうな勢いだったじゃないか。」
ふふ、と笑いながらエルヴィン団長は私の頭を撫でた。
「―――それとこれとは、わけが違います……。」
「まぁそうだな。」
「それに――――……。」
「ん?」
あなたのことを思う熱量も、以前とは比べ物にならない。だから怖さも比例して大きくなっていくんだと、言いかけて――――やめた。
「――――嬉しい。ナナ。」
「………!」
エルヴィン団長は目を細めて、よしよし、と更に頭を撫でてくれた。――――私が言わなかったその言葉までも、お見通しだ。
「私はこういう窮地を凌ぐのは割と得意だぞ?」
「知ってます……。」
「―――どうにも上手く話せなくなってしまうのは―――君の前でだけだ。ナナ。だから安心して側にいるだけでいい。」
縮みそうな心臓を押さえて、苦しい呼吸を押さえて、こくりと頷く。
「―――いい子だ。では、行こうか。」