第120章 一変
2日後の早朝、俺たちはまだ陽が昇る前に104期の新兵たちを連れて、カラネス区を出立した。馬を走らせ、昼前にウォール・ローゼ南部の施設に着いた。
もちろん立体機動も武器も持たさず。
理由も多くは告げない。
ただ新兵にとって危険な作戦に古参は駆り出されるから、戻るまでここで待機。ただそれだけだ。
平屋の建物で104期生を過ごさせ、それを見下ろせると同時に辺りの警戒もできる塔の上から交代で見張る。空は晴れていて見通しもいい。このままなにも起こらない事をただ願う。
「―――ミケ分隊長、私たちは……ここで何をすれば……?」
金髪の小柄な新兵が俺を見上げて問う。――――確かクリスタと言ったか。
「何もしなくていい。待機だ。」
「は、はい………。」
104期生の表情を見ていると、若干の様子の違いと――――匂いの違いが目につく。まるでなんのことだかさっぱりわからない、とだらけきっている者。わからない、どうすればいいのだろう、と不安を抱きつつも、言われた通り待機しておこうと無難な選択をしている者。
そして―――――、明らかに他の面々よりも、この状況を警戒している者だ。
――――ナナが注視していた2名………ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーだ。
見張りの交代のために塔へ上がる。
「おや、どうかした?」
「………いや。」
万が一彼ら2人が鎧と超大型だったら――――……さすがの精鋭班であっても対処しきれない。
悟られてはいけない。
あいつらを俺達が疑っているということを。なるべく刺激をしないようにせねば。ふっと息を吐いて、吸い込んだ、その瞬間。
「!!!!!」
「??ミケ??」
「トーマ!!!!早馬でエルヴィンに知らせろ!!!!」
「はい??」
南風に乗って匂うこれは――――巨人の匂いだ。
しかも―――――多数の。
「おそらく104期調査兵団の中に巨人はいなかった……!南より巨人多数襲来!!」
「なん……だって……?!」
「……ウォール・ローゼは……突破された!!!」