第11章 交錯
エルヴィンの言うことは大抵間違っていない。
正しい事を、綺麗に口にする。
ただ、あいつにとっては成し遂げるべき目標があり、それを達成するためには手段を選ばない。
それがエルヴィン・スミスという男の強さであり、俺が惹きつけられる引力を放つ核になっているのだと思う。
エルヴィンはナナを欲しいと言うが、人として、女として惚れているからではない。
目標の達成のため、ナナが必要だという意味なのだろう。だとすれば、エルヴィンは平気でナナを駒にする。
それだけは、どうやっても阻止する。
「……俺は、反対だ。あいつがどう言おうと、外には出さない。」
「……そうか。珍しく、意見が割れたな。」
エルヴィンの腹の底は俺には到底読めねぇが、今のナナを壁外調査に連れて行けば、ナナを守るために多くの兵士が命を落とすことになる。
それを目の当たりにして、ナナはどうなる?罪悪感から、より調査兵団のために尽くすか、最悪の場合、精神を病む可能性もある。
エルヴィンが本当にナナを一人の女として大事にする気があるのなら、自分の夢よりもナナを優先できるなら、エルヴィンにナナを任せるのが賢明だ。
俺と違い、まっすぐに日の当たる場所で生きていける男だ。
……だが兵団のために、人類のためという大義の元で俺と同じようにナナを駒の一つとして使う気なら、絶対に渡さねぇ。