第119章 黙秘
「この壁内に潜む“巨人化できる敵”も、“罪もない人々を欺いて危険に晒し続けている内側の輩”も。―――ただただ人類にとって純粋に良い未来を残すためなら、この世界の勢力図すら根本からひっくり返してしまおうと、そういう思考になる気がします。」
「……………。」
「――――つまり―――――………敵は誰で、誰が嘘をついているのか、隠しているのか、なんて小難しいことは考えず、人類にとっての最善をただただ考え、突き進めばよいのかもしれません。」
「……………。」
ハンジさんが私を見つめて目を丸くしている。
「ご、ごめんなさい……能天気すぎましたか……?!」
慌てて頭を下げると、ハンジさんがいつものように快活に、笑ってくれた。
「――――あはははっ!!!………相変わらず、おっもしろいねナナは!」
「お、面白いですか……?」
ハンジさんの手が私に伸びて来て、頭をぽん、と軽く撫でた。
「――――ナナの言う通りだ。疑心暗鬼になって足元を見失っちゃ、いけないね。」
「………はい。――――怖くても、辛くても、生きる事が苦しくても………最善を尽くすためにできる次の一手を、考えることを私はやめないと決めたんです。」
「そうか………。」
「あ、今とても生意気な事を言いましたね……!」
「ううん。ありがとうナナ。……いやぁそれに驚いた。――――まるでエルヴィンの半身だ。」
「………それは、身に余る褒め言葉です……!」
思わず笑顔を向けると、ハンジさんはとても嬉しそうに目を細めた。