第119章 黙秘
「ああ、やっとエルヴィンは手に入れたんだね。―――――大きな翼を休めることができる、最愛の存在を。――――私が待ち続けていたのは、やっぱりナナだった。」
「………??」
「あぁごめんね、こっちの話。でもついでにもう一つだけ独り言―――――、もう一人の私の大事な友人は――――自分を犠牲にし続けて愛する者を守ろうとする彼は、これからどうしていくのだろう。見届けないわけにはいかないな。」
「………リヴァイ兵士長の、ことですか……。」
「そう、やっぱりわかっちゃうか。」
「――――リヴァイさんが……『我儘で強欲なお前のままいりゃいい』と。」
「え?」
「『お前が望む時に、側にいてやる。望まないならそれでいい。ただ笑ってろ』と……。」
口に出してみるとより感じる。どんなに締めつけられる思いで、苦しさでこの言葉を選んで私に伝えてくれたのだろう。それに甘んじている私はずるいのか、それともいつかミケさんが言った通り――――リヴァイさんが守りたいものでいつづけることが正しいのか。
例えその心も体もエルヴィンのものであったとしても。
ほとぼりが冷めた頃に――――、またミケさんに話してみよう。私の心の奥底を本心を簡単に嗅ぎ分けて、ふっと笑ってくれるあの人に。
正解がわからない問を脳内に巡らせながら俯くと、ハンジさんは私の頭をぽんぽんと撫でた。目を向けたその先の彼女は、とても柔らかい微笑みを湛えていた。
「――――そうか、リヴァイの愛情は振り切るところまで振りきっちゃってるんだね。」
「……そうなのでしょうか。」
「リヴァイ自身が導いた解なら、私もそれを見守るよ。」
ハンジさんは少し切なそうに息を吐いて、軽く目を閉じた。そしてぱち、とその開かれたその瞳にはまた、いつもと同じ光と好奇心が宿っていた。
「――――ナナと話したら回復した!」
「光栄です。私も―――――ハンジさんと話せて、心が落ち着きました。」
「よし、会議でエルヴィンが問い詰められて半べそかくといけないからさ、事前に内容想定して準備しておかなきゃね。」
「はい!」
さっきまで立ち上がることが億劫で重かった腰を軽々と上げて、2人影を並べてエルヴィン団長の元へ戻った。