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【進撃の巨人】片翼のきみと

第119章 黙秘




――――――――――――――――――――

王都への招集当日。



ストヘス区を通過しようとした時―――――我々の耳に、落雷のような激しい音と地響きが届いた。始まったか。やはり――――、巨人化は避けられなかった。



「なんだ?!」



我々を護衛していた憲兵団が騒然とする中、同期だったナイルの、一角獣を配した背中に話しかけた。



「ナイル……すぐに全兵を派兵しろ。巨人が出現したと考えるべきだ。」

「なっ……何を言ってる!!ここはウォール・シーナだぞ?!巨人なんかが現れるわけがない!!」



ウォール・シーナだから巨人は現れない。

巨人という脅威から王政を守るはずの憲兵団がこの状況だ。中央に近づけば近づくほど、その内側の人間は巨人の脅威は自分達には無関係だと思っている。

だが実態は―――――人間なんだ。

女型以外にもいる、超大型や鎧の巨人。それがいつどこで巨人化してもおかしくないと、その危機感を奴らの身に刻まねばならない。

さもないと――――中央がくだらない保身を優先し続けることで、いずれ手遅れになる。これは言わば、私たち調査兵団の命運を以って臨む―――――荒療治だ。



「………エルヴィン、お前―――――一体………何をしている………?」



私を見つめるナイルの表情は、まるでかつての同僚を見る目ではなかった。

初めて相対する、底の見えない恐怖とでも対峙したような怯えた目をしていた。



また轟音が轟いた。

――――エレンも巨人化したか。

巨人同士の交戦が始まれば、それによって失われる住民の命や家屋などの損壊は激しいものになる。

これで何も残せなかった場合――――女型を捕らえられなかった場合に次の一手をどうすべきかに頭をまわす。



馬車から降りて来たナナが、そっと私の横に立った。



「――――次の一手を、考えていらっしゃるのですか。」

「――――ああ。」



彼女は現状を把握しようと住民の悲鳴や逃げ惑う姿から目を逸らさずにそれを見続ける。

自分も関わっている作戦で、また人が大勢死ぬ。




私とともに心を削りながら、その胸の内で涙を零しながら見ているのだろう。



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