第118章 溜飲 ※
「――――――っっっ!!!」
息ができなくなったかと思うほどの苦しさで飛び起きた。
がばっと跳ね起きるように上体を起こして、思わず自分の両手を確認する。
――――震えている。両手が血まみれだと思った。
でも、その手に血は付いていない。
夢だった。
まだ心臓がドクドクと脈打つ。
息が荒い。
呼吸が早い。
ああ、いつか言われたっけ………リヴァイさんに………『お前は感情の許容範囲を超えるとすぐに過呼吸を起こす』と。
落ち着け、落ち着け……夢だ、ただの夢。
こんなことで取り乱していてどうするの。
これからが正念場なのに。
じっとりと汗ばむ額を拭って、膝を抱えて顔を埋める。なんで、どうして――――エルヴィンが横にいるのに、こんな夢を見るなんて。
「――――そう言えばこの前も、嫌な夢を、見たな……。」
お父様に拒絶される夢だ。
どうやら夢というのは、私の中に巣食う弱い部分に付け込んで悪夢となり代わるみたいだ。
「――――ごめん、ごめん……みんな、ごめんなさい………。」
小さく贖罪の言葉を並べる。
だって、こんな夢を見るなんて。失礼極まりない。
誇り高く散って行った、人類のために心臓を捧げた彼らを―――――、私の心が弱いせいで、夢の中とは言え、あんなことを言わせた。
最後に私の名を呼んだあの影は、すらっと背が高くて、綺麗な髪がなびいて―――――、キラリと石の飾りが光った。
「――――リンファがあんなこと、言うはずない……っ……!」
言うはずない。
そんなことを言わせたのは私の潜在意識だ。
自分が生きていることに引け目を感じている、それがあんな夢になったのか。だとしても自分を許せない。
リンファに、ペトラに――――……大事な仲間に暴言を吐かせるような私の意識なんて、閉じてしまえばいいのに。
涙が次々溢れる。
自分が弱くて、下らなくて、生きている意味がわからなくて。