第118章 溜飲 ※
「なぁナナ。ナナ………この先もずっと、共に、いてくれるか――――?」
「…………。」
ひく、と時折ひきつるような呼吸をしながら、目は焦点が合ってない。
トんでるな。
愛おしいその小さな身体を強く抱きしめて、またあらゆる場所にキスを落とす。
「――――まぁ……嫌がっても、離さないがな――――……。」
「………エ……ル……ヴィ…………。」
ナナが小さく俺を呼んだ。
「――――どうした、ナナ。」
「――――ずっと……一緒に、いて……離さない、で………。」
「――――………。」
「――――置いて、行かない……でね……。」
ナナは涙を溜めて、縋るように俺を見上げる。願うように呟いてその濃紺の瞳を閉じると、溢れた涙が零れ落ちた。
ナナが俺を求めて、泣きながら離さないでと、置いて行かないでと言う。
心の疲弊が見てとれる。
どれほどこの調査で心をすり減らしたのか、想像に容易い。酷なことを強いておきながら、結果俺なしでいられない君が出来上がったことを喜んでいる自己中心的な自分がいる。
欲しくてたまらなかった君の心をこの手の中に―――ようやく手に入れられた。
「――――ああ、約束する。君の元に必ず帰るよ。」
そんな狡い自分を隠して、まるでただ深い愛情で誓うようにナナの首に光る片翼のネックレスにキスをする。
けれど、はたと思い返す。
君を繋ぎ止めようと贈ったこの翼に、早い段階から繋がれていたのはむしろ自分のほうだと、気付いた時にはもう―――――
とても後戻りできないほど、君に溺れていたんだ。