第118章 溜飲 ※
「――――錠剤……?」
「――――ねぇエルヴィン………。」
「それは――――……。」
「生きてる実感を、したい――――……。」
「―――やめろナナ、少なからず君の身体に負担になるだろう?」
「―――平気だった。この前も。」
「俺は君にもうあんなことはしないと――――……。」
「――――私が望んでも?」
「…………。」
「したいでしょう?本当は。………だってあの時、すごく興奮してた。――――生を確かめ合おうって、言った――――。私も確かめたい、ぜんぶ、くまなく。何も恐れずに、あなたの全てが欲しい……。」
ナナはその薬を舌に乗せた。
その表情は淫靡で不安定で、なんとかして俺をどこにも行かせたくないんだと物語っている。
そしてその唇を結んで喉を鳴らした。
はぁ、と色っぽい溜息をついて、乱れた白銀の髪の間から俺を見下ろす。
「――――今夜は全部、私の中に欲しい……エルヴィンの、すべて……。」
「――――堕ちるところまで堕ちてしまうぞ………いいのか、ナナ。」
「――――わがままで淫乱で――――……ごめんなさい………。でも、どうしても消せないこの胸の不安を――――、エルヴィンに、埋めて欲しい……。」
「――――そう言うなら、心おきなく好きに抱く。覚悟しろよ。」
「―――――あなたの、望むままに………。」
『――――愛してる。』
2人重なったその言葉を証明するように、持て余す愛情と昂る熱を持ち寄って、傾いていく月を横目に―――――
生と愛を確かめながら快楽を貪るその行為に、ただひたすらに没頭した。