第118章 溜飲 ※
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俺の腕に迷わず飛び込んで来るナナを抱きとめる。
ナナは少女のようにぎゅ、と俺の首に抱きついて、まるで離れようとしない。
行かないで、側にいて、と―――――言葉にできない我儘が行動に現れているみたいだ。
「――――ナナ、とても嬉しいが……そこまで抱きつかれたら、キスもできない。」
ナナの頭を撫でながら言うと、名残惜しそうにその身体を少し離して、至近距離で俺の目を見た。
――――何度見ても、いつ見てもナナの目は美しい。
吸い込まれそうになる濃紺の瞳。
その中に映る自分は、外面を取り繕った自分じゃなく―――――、本来の俺が映っている。
その目に魅入っていると、ナナが俺の頬を両手で包み込んで、その目を閉じたかと思うと――――、ちゅ、と小さく啄むようにキスをした。そのまま唇が触れそうな距離で銀糸のような睫毛が開いて、視線を絡ませてはまた目を閉じて、唇を食むようなキスを繰り返す。
その純粋なキスでは、俺は到底満足できない。
ナナを横抱きにして抱き上げ、その額や頬、首筋にキスをしながらベッドに運ぶ。ナナをベッドにそっと横たわらせてまたキスを続けると、ナナが俺を押し返して身体の上下が反転した。
俺の上に跨って髪を解いたその姿が美しすぎて、妖艶すぎて目を奪われる。
自らのシャツに手をかけてボタンを外しながら、そのシャツの白さと遜色ないほどの艶やかな白い肌を惜しげもなく露わにしていく。
シャツを脱ぎ捨てる間際に、ナナがその胸ポケットから何かを取り出した。それを包んでいた薄い紙を開いて、細い指がそれをつまんだ。