第118章 溜飲 ※
いつの間にこんなに、私の心の一部になったのだろう。
――――もっとしっかりしたい、こんな我儘で困らせたくない。
でも、力になりたいと――――同じ物を同じように考えられるようになればなるほど、エルヴィンに並べる自分に近付けば近づくほど―――――どうしようもなく、失う事が怖くなる。
「――――おいで、ナナ。」
私に向かって手を差し伸べてくれるエルヴィンは、困ったように少し笑いながら、愛おしいという気持ちとほんの少しのこの先の不安を滲ませた目を向けた。
私はそれが嬉しい。
――――きっとこの完璧な男は、私以外には決してこの顔を見せないから。
たまらず私は自由の翼を脱ぎ捨ててエルヴィンに駆け寄って、その腕の中に飛び込んだ。
その首筋から、ふわりと香水が香る。
その香りが全部私に移るくらいに―――――
私を染め上げるように、
強く抱いて欲しい。