• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第118章 溜飲 ※




私が随分思いつめたような顔でもしていたのか、エルヴィン団長が手に持っていた令状をぱさ、と机に置いた。そしてループタイを外して、伸びをする。



「――――……お疲れでしょう、もう遅い……。調査から戻ってから……またろくに休んでない……。」

「ああ………調査兵団団長として執務に当たれるのも、あと少しかもしれないと思うと名残惜しくてね。ついつい仕事に手を出してしまうんだ。」



エルヴィン団長が自嘲めいた笑いを零す。





「冗談でもそんなこと言わないで……!」



「――――ナナ。」



「いや………いやです………。」





俯いて小さく首を横に振る。エルヴィン団長は忙しいのに。

困らせたくない。

でも、今の私は、目の前で多くの仲間を失うことを見過ぎた私は――――どうしても怖かった。





「――――休もうか、ナナ。」



「………え………。」



「ハンジがよく言うんだ。“思考が悪い方に向く時は、休養が必要だよ”ってね。根を詰めるのもいいが、少しの休養はやはり必要だ。俺も、君も。」



「…………。」



「約束を果たそう。生きて帰って来たら、その生を確かめ合おうという約束を。」





調査兵団の団長から、整った髪を乱して私のエルヴィンに戻る。



乱れた金髪の隙間から覗く蒼い瞳が私を誘う。



この、澄んでいるのに深くて複雑で、色んな色を宿す目が好き。



何かを企む少年のような目も、色欲を濃く宿した魅惑的な目も。



/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp