第118章 溜飲 ※
「どうしたナナ。怖い顔をして。」
「――――まだ、終わってない……!」
「――――……ふふ、君は私に似て来たな。そうだナナ。まだ終わっていない。――――さて、君ならどうする?」
「――――アルミンが割り出した女型を、捕まえましょう。」
「どこで、どうやって?」
「王都招集の際、必ずストヘス区を通ります。彼女が所属しているのは偶然にもストヘス区支部―――――。護送に何らかの形で関わるはずです。エレンに接触させる機会を作れば、なにか行動を起こすはずです。そこを押さえる――――………。」
無謀な作戦だってことは承知だ。
けれど、なんとかしたい。
諦めない。
エルヴィン団長に全ての責任を負わせて、下手をすれば刑罰さえ下るこんなおかしな世界に黙って虐げられるなんてまっぴらだ。
真実の追及と人類のために戦うこの調査兵団を失わせない、絶対に。
「随分大胆な発想だ。が、面白い。」
「…………。」
「――――ただしその作戦は、おそらく高確率で――――多くの人間がまた死ぬぞ。君はそれをわかっていて、立案するのか?」
「――――わかって、います。」
目の前の命よりも、この選択で勝ち得た未来に残せる命を選ぶ。そんな事ができるようになったのは、良いことなのだろうか。それとも、残酷だと呼ばれるのだろうか。
いや、そんなことはどちらでも構わない。
だって私はエルヴィン団長やリヴァイ兵士長のように、そんな大それた大きな志で物事を判断していない。
もっと小さくて狡い―――――。
本当はエルヴィンを失いたくない。
リヴァイさんを失いたくない。
ハンジさんを、ミケさんを。
エレンを――――大事なものを失いたくないという、ただのエゴに過ぎない。