第118章 溜飲 ※
ひとまずカラネス区から調査兵団一行は自拠点へと引き上ることは保留とされ、しばらくカラネス区にとどまった。これから私たちはどうなってしまうのかと不安渦巻く空気が漂っていた。
リヴァイ兵士長はまだここからだと言っていた。そうだ、気を強く持って次の一手に備えなければ―――――……そう言い聞かせながら、調査後の事後処理に奔走していると、宿舎の守衛から連絡があった。
「ナナさん、エルヴィン団長宛に来客です。」
「あ、はい。」
もう遅いこんな時間に来るのは、王都からの使者か。
エルヴィン団長は調査後の損害状況のとりまとめや各箇所からの責任追及への対応で多忙が過ぎる。アポイントなしの来客は私がとりあえず対応をするために兵舎の玄関口に向かった。
「団長補佐のナナ・オーウェンズです。」
「調査兵団エルヴィン団長にこれを。」
「はい……。」
背中に一角獣を背負うのは、やはり王都からの使者。憲兵団だ。
その使者は一通の手紙を私に託して早々に去った。その手紙を受け取った手が、少し震える。
――――きっとこれは、今回の大損害の責任をエルヴィン団長に追及するための―――――召集令状だ。
重い足取りでエルヴィン団長のいる部屋に戻り、扉を開ける。
「――――ナナ、何だった?王都からの招集令状がついたか?」
「はい……おそらく……。」
エルヴィン団長はなんのことはない、と言った顔で私に向かって手紙を受け取るための手を差し出した。私は微かに震える手でその令状を手渡した。
さっそく開封して中身を一読したエルヴィン団長が、一言零す。
「――――3日後に王都に参集せよ、とのことだ。参集とは名ばかりの――――連行に近いがな。憲兵団が護送班としてご丁寧に迎えに来てくれるそうだ。」
「護送と言う名ばかりの、見張りじゃないですか……!」
「まぁそうだろうな。エレンに逃げられては困るだろうから、向こうも我々の参集をただ待つようなことはしない。」
「…………。」
拳を握りしめて俯く私をちらりと見て、エルヴィン団長はふ、と笑った。