第117章 戦慄②
「リヴァイ兵士長……っ……!」
リヴァイ兵士長にしては息が切れてる。
痛みがあるのか……私に何かできることは、と思い駆け寄るけれど、目も合わないままそれを制される。
「――――俺は問題ない。エレンを診ろ。」
「は、はいっ……!」
エレンを荷馬車に乗せて、私も同乗して様子を診る。
――――気を失っているだけで、目立った外傷などもなさそうだ。
「――――おかえり、エレン……。」
私は横たわるエレンの手をきゅ、っと握って祈る様に額を近づけて蹲った。
この心の内が、ついていけていない。
この僅か数時間で、一体何人の仲間が死んだのだろう。
みんなの表情が昏い。
この調査でエレンの能力の有用性を示すはずだった。そのために女型の捕獲に大きな犠牲を払って実行したのに――――、敵は、一筋縄ではいかなかった。
私が微かに震えるのは、その責任を問われるのはエルヴィン団長だということだ。悪い事ばかりが頭を過るそれを振り払うように空を見上げると、私たちが還るべきカラネス区の壁門が見えて来た。
こうして多くの命を失って―――――第57回壁外調査は幕を閉じた。