第117章 戦慄②
「項ごと齧り取られていたようだが、エレンは死んだのか?」
「エレンは生きてます。目標には知性があるようですが、その目的はエレンを連れ去ることです。殺したいのなら潰すはず……目標はわざわざ口に含んで戦いながら逃げています。」
「――――エレンを食う事が目的かもしれん。そうなればエレンは胃袋だ……普通に考えれば死んでるが……。」
「生きてます。」
俺の言葉を、強い意志を持って打ち消す。だが証拠も何もない。希望的観測だ。
「……だといいな。」
「………そもそも……あなたがちゃんとエレンを守っていれば、こんなことにはならなかった……!」
「お前は、あの時のエレンの馴染みか。………そうか………。」
審議所で俺を殺しそうな目で見ていた奴だ。
その時から一貫して――――ミカサの行動理由は全て“エレンを守る事”だ。こいつにとっての生きる意味は、“エレンを守る”ことなんだろう。
周りなどどうでもよくて―――――、ただ自分の手で、がむしゃらに愛する者を守ろうとするミカサはまるで――――――兵士長になる前の昔の自分を見ているようだ。
ほんの少し俺を動かしたのは、ミカサのその目が強く物語っていたから。
同時に、なりふり構わず愛する者だけを守ろうと動けるこいつが―――――羨ましくもあった。
「目的を一つに絞るぞ。まず…女型を仕留めることは諦める。」
「奴は……仲間をたくさん殺しています……!」
「あの硬化させる能力がある以上は無理だ。俺の判断に従え。」
ミカサの“生きる意味”を、失わせない。
そしてそれが人類にとっての最善に繋がると信じる。
「エレンが生きていることにすべての望みを懸け、奴が森を抜ける前にエレンを救い出す。――――俺が奴を削る。お前は奴の注意を引け。」