第117章 戦慄②
森の中を進みながら、最悪の光景を目の当たりにした。
鬱蒼とした、光も差しにくいこの森の中でまるで生贄のように宙吊りになったまま息絶えたグンタ。
目を開いたまま、その身体のほとんどを無くして転がっているエルド。
血まみれで伏すオルオと――――――、帰ったら―――――という約束をしたばかりだった、変わり果てたペトラ。
命尽きるその瞬間、お前たちは何を思った?
俺を呼んだのか?
手の届くものを、大事な奴らを守りたいと思えば思うほど―――――この手からその命が零れていく。
そうだ。
結果は誰にもわからない。
悔いのない選択をしても、自分の選んだ道を進んでも、こうして無情に大切なものが散っていく。
4人の遺体をただ冷めた感情で眺めて、俺はエレンを追った。
俺より先にエレンの元に駆けつけていたのは、ミカサだ。
エレンの巨人体の項は齧り取られていて、女型が逃げる後ろ姿を見た。そしてそれをミカサが追っている。状況から察するに、エレンは女型に敗北し、本体ごと項から食いちぎられて――――、食われたのか、攫われたのか。
ミカサが必死に女型を追っている様子からすると、エレンが生きている可能性はまだある。
ミカサが何度も女型に取りついては攻撃の手を緩めない。なるほど、なかなかの戦闘力と身のこなしだ。
――――だが、感情に任せて冷静さを欠いている。
このままだと、その内叩き潰される。
俺は女型の攻撃を受けても更に追おうとするミカサを、力づくで止めた。
「同じだ。一旦離れろ。」
ミカサが不本意そうに俺を睨む。