第117章 戦慄②
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少し離れた場所で待機していた補給物資の荷馬車からガスと刃を補充しながら、エレンたちが未だ現れないことに嫌な予感を感じていた。
「ちっ………ナナの奴はなにを道草食ってやがる……。」
ナナが放ったとは思えない信煙弾といい、この時間といい―――――何かがおかしい。早急にエレンたちを探して落ち合わねぇと―――――、ナナの安否も気になる。
早々にその場を飛び立った瞬間、聞き覚えのある叫び声が聞こえた。
「この声―――――、エレンか………?」
何もなくてエレンが巨人化することは考えにくい。
何かあった。心臓がはやる。
声の方へと向かう俺の前に現れたのは―――――ナナだった。
「――――リヴァイ、兵士長……!」
「どうした。何があった。エレンが巨人化して戦っているのか?」
ナナの呼吸が異常に荒い。
身体を震わせて、必死に言葉を絞り出そうとしている。はぁっ、はぁっ、と過呼吸に近い苦しそうな息をしながら、悲痛に歪めて涙を流したままの顔でそれを話した。
「――――女型の巨人が再度出現……リヴァイ班、は、全滅――――……。エレンが、巨人化して……女型と……っ……交戦中、です……!」
「―――――……よく伝達した。エルヴィンに知らせろ。エレンのところへは俺が行く。」
「は、い……。」
ナナはすぐにそこを飛び立った。
その背中の自由の翼を見つめてふと思う。――――もうまるで―――いっぱしの兵士だな、と。
だがそんな感傷に浸る間もなく、俺もまたエレンの声のする方へ飛ぶ。