第117章 戦慄②
エレンは逃げたかどうか、それも報告しないと―――――、とエレンが逃げた方向に目をやった。
巨大樹の中から、すぐに飛び出してきた彼こそが、私が逃げてと願った―――――エレンだった。
「――――エレン……?!」
「……ナナ……?!」
その大きな生意気そうな瞳に涙を浮かべて、その滴を散らしながら。
「こいつを殺す……!!離れろ、ナナ。」
そう言って、エレンは右手をがり、と噛んだ。
その瞬間―――――またあの閃光と轟音と共に、その巨大な身体が宙にいきなり出現した。
その大きな身体は女型に覆いかぶさって拳を思いきり振り上げたが、女型は辛うじてその拳を避けた。
エレンのその怒りに任せた拳は地面を打って、あまりの力に拳が、腕が耐えられなかったのだろう、骨が砕けて筋肉も全てが破損した。
――――もちろん、破損した端から蒸気を上げて修復が始まっている。見れば見るほど目を疑う生態だ。
そしてエレンの様子が、おかしい。
自我はある。
あるけれど―――――……怒りに狂っている。
そんな様子だ。何か、声を発そうとしている。
「オァエ!!!!ガァッ!!!!オアェガ!!!ガァァアアアアッ!!!!」
「――――エレンが、怒ってる………。」
お前が………と言っているのか。
仲間を殺したその女型に報いをうけさせようとしているのか。
でもその声は酷く苦しくて、悲しい。
――――ああきっと、この子は自分を―――――、自分の選択を責めている。もっと早く戦えば良かったと、その強すぎる想いを拳に込めて、自身が傷つくほどにそれを振るった。
「――――エレン、エレン……っ……!」
もしこのままエレンが暴走を始めたら、私じゃ止められない。なにも出来ない。誰か――――リヴァイ兵士長を、呼んで来なきゃ……!
私はその場を飛び立って、リヴァイ兵士長の元へ向かった。