第117章 戦慄②
「ペトラ!!!!早く――――」
「――――おねがい……やめ、て――――――!!!!!」
その巨体の全体重をかけた足の裏がペトラを捕らえて―――――私はどうしても、見ることができずに顔を背けてその場に伏した。
身体が潰され、血が噴き出したその音だけを――――、崩れ落ちて、伏せたまま聞いていた。
みんな即死だった。私はまた何一つ、救えない。
『私、もっともっと強くなって―――――兵長の横で、同じ物を見て、同じ物を目指せるように―――――……頑張ります………!』
キラキラと輝く目でリヴァイ兵士長への想いを語ってくれた。
そして彼女はそれを達成して、今こうして――――憧れの人の側でようやく、戦うことができたのに――――。
恐る恐る顔を上げて私が見たペトラは、いつもの朗らかに笑う可憐な花のような姿はどこにもなく、その目から光を失ったまま―――――ずるりと、血まみれの大木を滑るように地面に落ちた。
「もう、嫌だ、逃げて、みんな―――――死なないで、逃げて……オルオ……エレン……。」
そんな蚊の鳴くような声が届くはずもなく、オルオが仲間の敵を討つべく女型の項を狙ったけれど―――――、硬質化によって防がれ、刃が砕け散った。
キラキラと光を反射しながら落ちる刃の破片をも薙ぎ払うような女型の蹴りが―――――オルオの身体を叩きつけて、噴き出た鮮血と共に吹き飛ばした。
「―――――…………。」
ただただ呆然と、何もできず、その様を見ていた。
戦うことも、救うこともせずに。
――――ダメだ、でも、どんなに自分に生きる価値を見出せなくても、見届けて、記録して、少しでも情報を残さないと。
それが私に課せられた責務だ。
立て、
立て、
立て。