第117章 戦慄②
「――――すごい!!回復するまでに………倒せる……?!」
一筋縄ではいかず、項を両手で守って女型はその背を大木に預けた。視力が回復するまで、時間を稼ぐつもりだ。
けれど精鋭中の精鋭である彼らは、そんな手をも上げてられないほどあらゆる筋肉を削ぎ切った。
当然、巨人であっても筋肉が断たれてしまえば身体は動かせない。その両手がみるみる削ぎ落とされ、だらん、とついに垂れた。
首を狙おうとエルドさんが近づいたその時―――――
潰されたはずの右目が、ぎょろ、と彼を捕らえた。
「――――エルドさん――――――っ………!」
エルドさんに食らいついた女型の口から、人形のように手足が落ちた。
うそ、
うそ、
うそ………
次の瞬間にごみのように口から吐き出されたのは―――――、手も足も失った、エルドさんの上半身。
ごろ、と草むらに転がった。
『ナナはもう調査兵団に欠かせない存在だ。―――――帰って来てくれて嬉しい。おかえり。』
王都から戻った私に、笑って声をかけてくれたエルドさんが鮮明に思い起こされる。
まるで目の前で起きたそれを受け入れることを頭が拒否しているみたいに。
駄目だ、駄目。
今感情に引きずられちゃいけない――――、なんとか女型に目をやると、右目だけを集中して早く再生したのか、ぎょろっとした目でペトラを認識した。
「――――ペトラ、逃げて―――――……!」
「ペトラ!!!!早く態勢を直せ!!!」
女型の異変に気付いて攻撃を踏みとどまったペトラが、女型から距離を取ろうと立体機動を駆使して離れるけど――――、動揺と急な体勢転換でバランスが崩れている。
オルオが激を飛ばすけれど―――――女型は地面を蹴って全身のばねを使って、ペトラを追った。