第117章 戦慄②
――――見えた。
振り返って動揺するエレンを担いで逃げるのは、オルオだ。
ペトラもエルドさんも、動揺して何かを叫んでいる。その時私の少し前を、木の陰からフードを深く被った調査兵団の翼を背に背負った人物が見えた。
――――こいつだ……!
グンタを殺して――――……そして今エレンを追ってる。
何、誰?!女型の仲間、もしくはもっと全く別の――――マシューさんのように、身元を偽って潜入していた中央からの差し金か――――?
いや、待って……ハンジさんが前に言っていたことと、エルヴィン団長のリヴァイ兵士長への指示を思い返す。
『超大型巨人の“中身”が立体機動装置を纏っていたとしたら――――、巨人を消し去る時の蒸気に紛れて身を隠せる』
『リヴァイ、ガスと刃を補充していけ。』
エルヴィン団長がそれをリヴァイ兵士長にさせたのは、まだ終わってないと思ったからだ。
待って、もしかして―――――……私の前を行く小柄な人物は、もしかして。
そう思った瞬間、フードがなびいたその隙間から―――――風にゆらめく金色の髪を見た。さっきまで拘束していた――――女型の巨人と同じ、金髪。次の瞬間、目の前に閃光と轟音が轟いた。
「――――まさか……女型の巨人?!?!」
何度でも出現させられる。
そうか、エレンもあの日不完全ではあったものの、複数回巨人化して見せた。更に訓練を積んでその力を使いこなしているのなら、造作もないはずだ。
幸いなことに女型は私に気付いていない。
エルヴィン団長の言ったとおりだ。もう拘束具もない。こうなってはもう女型の巨人を拘束することなど不可能だ。―――――ならばせめてあらゆる情報を得る。持ち帰る。そう決意を胸にその戦闘を見守る。
エレンはリヴァイ班に女型を任せて逃げる選択をしたようだ。
エルドさんとペトラ、オルオが3人で女型に切り込む。
あの日、トロスト区内に残った巨人を掃討したときよりもはるかに連携のとれた動きで、さっそく女型の両目を潰して視力を奪った。