第10章 愛執
「よく、耐えたな。」
「…………い、じ、わる………ですっ……!」
ナナは恨めしそうに俺を見上げる。その顔も、悪くねぇ。
エルヴィンは、全て見透かしているかのようにアルルをこの部屋にタイミング良く寄越してきやがった。
俺はぎりぎりのところで残っていた理性を取り戻し、ナナのシャツのボタンを一つずつ閉じた。
「………終わり、ですか。」
「ああ。なんだ、残念か。」
「………私が、ガキだからですか。アウラさんみたいに、魅力がないからですか……?」
アウラがナナに牽制をかけたか。
俺とアウラの関係を知っているようだった。
「………違う。………あいつとはそれぞれの性欲の発散という点で利害が合致しただけのことだ。………お前とは違う。だから、できない。」
「………どういう、意味ですか?」
俺は、はぁっとため息をついてナナの頭を撫でる。どこまで鈍いんだ、こいつは。
「……今朝も言ったが、俺はお前が可愛くて仕方ねぇ。笑った顔も、怒った顔も、真剣な顔も……さっきの、欲情してる顔も。全部一番近くで、俺だけに見せればいいと思ってる。」
「だったら……っ!側に、置いてください……!」
ナナは俺の腕を掴んで縋る。