第10章 愛執
「………俺は、ビクターと同じだ。」
「………え………?」
「お前を自分の欲望でめちゃくちゃに汚してしまう。俺はお前を守るどころか、傷付ける。情けねぇが、もう、抑える自信がねぇ。」
「………いいです。抑えなくて。リヴァイさんになら、何をされても。」
ナナはまっすぐに俺を見つめる。
本気だということは、わかった。
「―――――――――アウラさんに……っ……したように、私にもしてください………っ!」
俺の胸に縋るように、懇願するナナ。
この一件で、ナナの中の“女”の部分が開いたのか。
俺が今まで見てきた少女は、急に殻を破って孵化しようとしている。
喜び、焦燥、昂奮、どの言葉も当てはまるが的確ではない、複雑な感情が俺の中にわだかまりを残した。
「………それが、自己犠牲だと言っている。」
「ちがっ………!」
俺はドアノブに手を掛け、何か言いたげなナナを見下ろした。
「………頭を冷やせ、馬鹿野郎。」
呆然とするナナを残し、俺は部屋を出た。