第10章 愛執
「………聞かせろ。」
俺は再びナナの耳に口を寄せ、意地悪く水音をたててそこに舌を這わせる。
「あっ………や………っ!………んうっ………!」
その声を聞きながら、ナナの首元から一つずつ片手でシャツのボタンを外していく。
徐々に露わになる白い肢体には、生々しく痣や唇の跡が残っている。
俺は怒りを抑えられず、首元の跡をなぞるようにしてその場所に口を寄せ、強く肌を吸った。
何も考えられないほど、興奮していた。
「――――――――ナナ??」
扉の外から、アルルの声がする。ナナはビクッと肩を震わせた。どうしよう、と眉の下がった困り顔で俺を見上げる。それが堪らなく可愛くて、ついいじめたくなってしまう。
「気付かれたくなければ、普通に振る舞え。」
「!!」
俺はナナの耳元で囁いた。すると、ナナは顔を真っ赤にしてアルルに返事をした。
「ご、ごめんアルル………!今、着替え……てて………んっ――――――!」
次の言葉を遮るように、意地悪く口付ける。
「あ。そうなの?身体大丈夫??手伝おっか?」
ナナは慌てて俺の口づけから逃げ出すと、平然を装ってアルルに返事をするが、その声は明らかに熱を帯びていた。
「―――――はぁ………っ!!………だ、大丈夫………!ありがと………!」
「そっか。エルヴィン団長に様子を見るように言われたんだけど……大丈夫そうだね!じゃ、先に食堂行ってるけど、早くおいでよ?」
「ん……!はっ………わ、わかった!………ぁ………!」
アルルの足音が遠のいていく。
ナナは膝の力が抜け、その場に座り込んだ。
まるで訓練の後かのように、身体を上気させて肩で息をしている。