第116章 戦慄
周りの兵士の様子………負傷者の状況、という事だろうか。
いや違う。
それならきっとエルヴィン団長はそう言うはずだ。
周りの兵士………良くない何かが、潜んでいるならそれを見破れと……?これまで日々の、数々のエルヴィン団長とのやりとりが思い出される。
私の洞察力と観察眼を信頼しての任務だと理解する。
「――――行きます。」
「頼む。」
「―――ちっ、補充したら俺も行く。」
「ああ、任せる。」
私がエレンたちに向けて信煙弾を放とうとした瞬間、別の場所から信煙弾が上がった。
「え……?」
リヴァイ兵士長なわけがない。
今ガスと刃を補充しているはずだから。じゃああそこにエレンたちがいるという事か……リヴァイ兵士長が言った待機場所より随分と女型の捕獲場所に近い。
リヴァイ兵士長の命令に背くはずもないけれど……と思った矢先、先の信煙弾に応えるように、リヴァイ兵士長が待機を命じていたであろう場所から信煙弾が放たれた。
「今のがエレンたち……?だとしたら………やっぱりさっきのは――――。」
嫌な予感がする。
とにかく2発の信煙弾を結んだ直線上で落ち合うはず。
だけど――――もしものことがある。エレンたちの居場所よりも東側から回り込むようにして接近しよう。
しばらく木々の間をすり抜けて移動すると、遠目にエレンたちと思わしき班を見つけた。
その瞬間、1人の兵士ががくん、と体勢を崩して木に衝突し、ぶら下がった。
「えっ………?!」
「グンタさん?!」
小さく聞こえたのは、エレンの声だ。
じゃああの体勢を崩したのは――――グンタ?
残りの班員はエレンも共に、グンタを残して消えた。